目次
背景
- 何事にしても真実性と証明の関係は切り離せない
- 特に、コンピューターと違い人間は誤謬や嘘が多い
- 故に、相手の言っている事が正しいのか否かを見極めるのが大切
- 特に人間は根本的に嘘をつく生物であり、それを信じてしまう特性がある
- そこで、真実(Truth)と証明(Proof)と事実(Fact)について考えてみた
定義
Fact、Truth、Proofの定義は以下となる。
- Fact(事実)
- 客観的に観察や検証が可能な現実世界で起きた現象や出来事
- Truth(真実)
- 命題が現実と一致する性質
- Proof(証明)
- その命題が真であることを論理的に示す手段
- 別の言い方だと、命題がTruthであることを裏付ける十分な証拠または十分な議論の事
つまり、真理が客観的な現実に基づく一方で、証明はその真理性を確立するための論理的過程である。
Premise
前提と事物
- TruthもFactもProofは、あくまで人間の認知における相対的な事物である
- つまり、形而上の事でもない限り、絶対的かつ完全な正しさは証明できない
- 形而上の事物の例: $1+1=2$
- つまり、ProofもTruthもFactで共通しているのは前提(Premise)が一番大切
- 形而上のものでもAxiomや公理系のような暗黙の前提を基にしている
Fact
情報のソース
Factのもとなるデータも集め方によって次の言い方がある。
- 1次ソース
- プライマリーデータ
- 自らがアクティブに集めたデータ
- 直接的に目的と関連する
- 2次ソースの場合
- セカンダリーデータ
- 自らがパッシブに集めたデータ(つまり、別目的で他人が集めたデータ)
- 間接的に目的と関連する
真実性と真実相当性
一般的には、下記をベースに真実性や真実相当性を判断するべき。
- 情報提供者の属性
- 証言のエビデンス、物証
- マルチソースによる証言の交差検証
情報の多元性
- 円柱は見る方向によって図形が変わる
- 情報も同じで情報量、言葉の意味や定義の理解によって変わる
- また、同じ情報でも見方(粒度や解像度)によっても大きく変わる
Truth
真理観の種類
真理観の定義は、三つの説がある。
観点 | 対応説 (Correspondence Theory) | 整合説 (Coherence Theory) | 実用主義的真理 (Pragmatic Theory) |
---|---|---|---|
定義 | 命題が現実の事実と一致していれば真である | 命題が他の命題や信念と整合していれば真である | 命題が有用で実用的ならば真である |
真理の基準 | 現実との対応 | 信念体系内の一貫性 | 効果や結果としての有用性 |
検証方法 | 観察・経験・証拠による検証 | 論理的整合性や全体との矛盾のなさ | 実験・実践における有効性の確認 |
適用分野 | 科学・歴史・日常的事実 | 数学・論理・哲学 | 政策・倫理・ビジネス・教育など実践領域 |
長所 | 現実と照らし合わせるため客観性が高い | 知的体系内での整合的な理論構築に適す | 柔軟で現実的な意思決定に役立つ |
短所 | 現実の正確な把握が困難な場合がある | 現実と乖離した体系でも真とされうる | 結果主義に偏る可能性がある |
命題と現実の関係
命題:
- ある主張や考えの内容を表す文や言葉
- 例: 「太陽は東から昇る」「このリンゴは赤い」
現実:
- 観察できる物理的・実在的な状況や事物
- 例: 実際に太陽が東から昇る様子、赤いリンゴがそこに存在する
- 一致する性質:
- 命題の内容が現実の状態と一致する場合、その命題は「真」であるとされる
- 例:
- 「太陽は東から昇る」という命題は、実際に太陽が東から昇るという事実と一致するため「真」
Truth vs. Facts
- TruthとFactsの関係をベン図すると上図になる
- つまり、「Truth => Fact」だがその逆は成り立たない
- 「Fact => Truth」は間違い
- もちろん対偶の「Factではない => Truthではない」は正しい
- 実証主義的には事実ではないなら、真実ではない
絶対的真実 vs. 相対的真実
- 絶対的真実(Absolute Truth)
- すべての状況や観点を超えて普遍的である真実
- 例: 地球が重力を持つこと
- 科学や数学の法則に該当
- これは常に一つ
- 相対的真実(Relative Truth)
- 文脈や観点に依存し、異なる見解が存在する真実
- 例: 「自由とは何か」という問いに対する答え
- 哲学や倫理、文化的な問題に該当
- これは複数あるかもしれない
Proof
存在と量化のMatrix
量化(Any/All)と存在/非存在を整理すると次になる。
- | 存在する (∃) | 存在しない (∄) |
---|---|---|
Any (∃x) | ∃x P(x) (楽, 低難易度, 天使の証明) | ¬∃x ⇔ ∀x ¬P(x) (普通, 中難易度) |
All (∀x) | ∀x P(x) (難しい, 高難易度) | ∄x ⇔ ∀x ¬P(x) (非常に難しい, 悪魔の証明) |
この表は次を意味する。
any exists
(少なくとも1つは存在する) → ∃x P(x)- 「あるxについてP(x)が成り立つ」
- 1つでも例を示せば証明完了(楽)
- 「天使の証明」 に該当
any does not exist
(一つも存在しない) → ¬∃x P(x) ⇔ ∀x ¬P(x)- 「どのxについてもP(x)が成り立たない」
- すべての対象について「P(x)が偽である」ことを確認する必要がある(中程度の難易度)
all exist
(すべてが存在する) → ∀x P(x)- 「すべてのxについてP(x)が成り立つ」
- 全部チェックする必要があるため、証明が難しい。
all do not exist
(すべて存在しない) → ∄x P(x) ⇔ ∀x ¬P(x)- 「どのxについてもP(x)が成り立たない」
- 最も難しい証明(悪魔の証明)
悪魔の証明と天使の証明
- 一般的に存在の否定の証明は悪魔の証明と言われる
- 「悪魔じゃない事」の証明は難しいから
- それのあえて逆を考えると、天使の証明と名付けた
- それは1件以上の証明をすればいいから楽なため
範囲(スコープ)と真偽の関係
- 一般的に悪魔の証明は不可能とされる
- しかし、範囲を絞った上では可能になる
- つまり、全て存在しないのではなく、ある範囲では存在しないという証明
- その範囲がサンプルとなり、統計的な証明となる
- これらをまとめると、次の表になる
- | 範囲が狭い (小さい集合) | 範囲が広い (大きい集合) |
---|---|---|
any exists | 偽になりやすい | 真になりやすい |
all exists | 真になりやすい | 偽になりやすい |
any does not exist | 真になりやすい | 偽になりやすい |
all does not exist | 偽になりやすい | 真になりやすい |
正しさの確率
- 一般的に言葉で「ある/ない」と表現するときは次の意味になる:
- 「ある」の証明
- 「1つ以上ある事」を意味する
- 具体的な例を1つ示せば成立する(存在証明)
- 「ない」の証明
- 「全くない事」を意味する
- すべての可能性を調べる必要がある(全称否定の証明)
- 「ある」の証明
- つまり、「ある」方の証明方が楽で、「ない」方の証明の方が困難である
- 故に、真実かの事前確率は「ある」と主張するのが高く、「ない」は低くなる
まとめ
- Premise
- 共通して大切なことは前提
- Fact
- Factもその情報の属性や性質が重要である
- 事実はあくまで現実の一側面
- Truth
- 真理には、真理観が複数ある
- 絶対的な真理と相対的な真理もある
- Proof
- 証明の仕方によって証明の簡易さが変わる
- 内容より構造で判断できる