背景
- 機械学習におけるデータ品質QAの再考でDMBOK2(データマネジメント知識体系第2版)について調べた際、同じ「〇〇BOK(Body of Knowledge)」という形式の体系が、プロジェクトマネジメントやビジネスアナリシスの分野にも存在することに気づいた
- 3つを並べて比較すると、それぞれの分野が何を対象に知識を体系化しているか、どこで重なるかが見えてくる
PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)
- Project Management Body of Knowledge
- PMI(Project Management Institute)が策定
- 最新版は第8版(2025年11月Kindle版、2026年1月紙版刊行)
- 第7版(2021年)では、12原則・8パフォーマンスドメインというプロセスを規定しない抽象度の高い構成へ大きく転換したが、現場からは具体的な手順の指針が薄くなったという声があり、第8版では構造性を取り戻し、6原則・7パフォーマンスドメイン・40の非規範的プロセスという構成に整理された
- 6つの原則: Adopt a Holistic View(全体観を持つ)、Focus on Value(価値に焦点を当てる)、Embed Quality(品質を組み込む)、Lead Accountably(責任を持って導く)、Integrate Sustainability(持続可能性を統合する)、Build Empowered Teams(自律的なチームを築く)
- 7つのパフォーマンスドメイン: Governance(ガバナンス)、Scope(スコープ)、Schedule(スケジュール)、Finance(財務、第7版までのCost管理から改称)、Stakeholders(ステークホルダー)、Resources(資源)、Risk(リスク)
BABOK(ビジネスアナリシス知識体系)
- Business Analysis Body of Knowledge
- IIBA(International Institute of Business Analysis)が策定
- 最新版はv3(2015年刊、2026年時点でも最新版のまま)
- 6つの知識エリア: ビジネスアナリシス計画とモニタリング、エリシテーションとコラボレーション、要求のライフサイクルマネジメント、戦略分析、要求分析とデザイン定義、ソリューション評価
- BACCM(Business Analysis Core Concept Model)という6つのコア概念(Change・Need・Solution・Stakeholder・Value・Context)が定義されており、どの知識エリアの作業も、この6概念の組み合わせとして理解できるようになっている
DMBOK2(データマネジメント知識体系)
- Data Management Body of Knowledge、第2版(2017年刊)
- DAMA International(Data Management Association)が策定
- 中心に「データガバナンス」を置き、その周りに10の知識領域(データアーキテクチャ、データモデリングと設計、データストレージと運用、データセキュリティ、データ統合と相互運用性、ドキュメントとコンテンツ管理、参照・マスタデータ管理、データウェアハウジングとBI、メタデータ管理、データ品質)を配置した「DAMAホイール」という図で体系が示される
- データ品質はこの11領域のうちの1つで、機械学習におけるデータ品質QAの再考で扱った内容は、この1領域の中の話に過ぎない
3つの比較
| - | PMBOK | BABOK | DMBOK2 |
|---|
| 策定団体 | PMI | IIBA | DAMA International |
| 体系化する対象 | 有期性のある活動(プロジェクト) | 変化とニーズの解決(要求) | データという資産 |
| 中核となる構成 | 6原則・7パフォーマンスドメイン | BACCM(6つのコア概念)・6知識エリア | データガバナンスを中心とした11知識領域 |
| 最新版 | 第8版(2025年) | v3(2015年) | 第2版(2017年) |
- 対象(プロジェクト・要求・データ資産)はそれぞれ違うが、根底の構造はよく似ている。どの体系も、中心に据える概念がガバナンス・ステークホルダー・価値(value)という共通の軸に収束する
- PMBOKのStakeholdersドメイン、BABOKのBACCMのStakeholder、DMBOK2のデータガバナンスは、いずれも「誰がどう関与し、何に責任を持つか」を扱っている点で対応している
- 実務では3つが同時に必要になる場面がある。例えば、データ移行プロジェクトでは、PMBOKの観点でプロジェクト全体の進行を管理し、BABOKの観点で移行先システムへの要求を定義し、DMBOK2の観点で移行対象データの品質・ガバナンスを管理する、という具合に、1つの仕事の異なる側面をそれぞれの知識体系が受け持つ
まとめ
- PMBOK・BABOK・DMBOK2は、それぞれプロジェクト・要求定義・データ資産という異なる対象を体系化した知識体系で、策定団体(PMI・IIBA・DAMA International)もそれぞれ異なる専門職能に対応している
- 対象が違うだけで、ガバナンス・ステークホルダー・価値という共通の軸を持つ点で構造は似ている
- PMBOKは2025年の第8版で、抽象度の高かった第7版の構成からプロセスベースの構造を取り戻した
- 実務では3つの知識体系が重なり合う場面があり、特にデータ移行のような複合的なプロジェクトでは、同時に参照することになる
参考文献
- 機械学習におけるデータ品質QAの再考
- PMI. “A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK Guide) – Eighth Edition” (2025)
- IIBA. “A Guide to the Business Analysis Body of Knowledge (BABOK Guide) v3” (2015)
- DAMA International. “DAMA-DMBOK: Data Management Body of Knowledge, 2nd Edition” (2017)