目次
背景
- MeCabの仕組みで、Naive Bayes・Logistic Regression・HMM・CRFの対応関係(generative-discriminative pairs)を扱ったが、これはさらに一般化できる
- この記事では、確率的グラフィカルモデル(Probabilistic Graphical Models, PGM)全体を、「生成か識別か」という軸と、「データ構造の複雑さ」という軸の、2つの軸で整理する
前提知識
Naive Bayes
- 特徴量$X$の各要素がクラス$Y$ごとに独立に生成されると仮定した、最も単純な生成モデルの分類器
- 詳しい仕組みと計算例はナイーブベイズ分類器で扱う
Logistic Regression
- Naive Bayesと同じ特徴量を使うが、同時分布$P(X,Y)$を生成的にモデル化せず、条件付き分布$P(Y\mid X)$を直接モデル化する識別モデルの分類器
- 特徴量の重み付き線形和を、シグモイド関数(2クラスの場合)やソフトマックス関数(多クラスの場合)に通して確率に変換する
- Naive Bayesのような特徴量の独立性の仮定を置かないため、特徴量同士の相関が強い場合でも、Naive Bayesより精度が高くなりやすい
- Naive Bayesとは「生成・識別ペア」の関係にあたる(Ng & Jordan, 2002)
確率的グラフィカルモデルとは
- 複数の確率変数の関係性を、グラフ(ノードとエッジ)で視覚的に表現し、確率の計算を効率化・体系化するための枠組み
- ノードが確率変数、エッジが変数間の依存関係を表す
- 有向グラフ(ベイジアンネットワーク、因果関係を矢印で表す)と、無向グラフ(マルコフ確率場、条件付き確率場)の2種類に大きく分かれる

軸1: 生成モデルと識別モデル
生成モデル(Generative Models)
- データがどのように発生したかを、同時分布$P(X,Y)$としてモデル化する
- 未知のデータが入力されたとき、「もっともらしいか」を評価したり、新しいデータを生成したりできる
- 例: Naive Bayes、Markov Models(マルコフモデル)、有向グラフィカルモデル(ベイジアンネットワーク)
識別モデル(Discriminative Models)
- 入力$X$から正解ラベル$Y$を予測する条件付き分布$P(Y\mid X)$を直接モデル化する
- 分類・予測の正確さに特化しており、多くの場合、生成モデルより予測精度が高くなりやすい
- 例: Logistic Regression、Linear-Chain CRF、CRF(条件付き確率場)
軸2: データ構造の複雑さ
独立データ
- データ同士のつながりを考えない(あるいは独立と仮定する)、最もシンプルなモデル
シーケンスデータ
- 文章の単語の並びや時系列データのように、前後の文脈・順序関係があるデータを扱う
一般のグラフ構造
- 一列(チェーン)ではなく、網の目のように複雑に絡み合った関係性を扱う
2つの軸によるモデルのマッピング
- 2つの軸を組み合わせると、見た目の違うモデルが同じ構造の中に位置づけられる
| - | 独立データ | シーケンスデータ | 一般のグラフ構造 |
|---|---|---|---|
| 生成モデル | Naive Bayes | Markov Models(HMMなど) | ベイジアンネットワーク(有向グラフィカルモデル) |
| 識別モデル | Logistic Regression | Linear-Chain CRF | CRF(一般のグラフ上の条件付き確率場) |
- 横に見ると、同じ「生成・識別」のペアが、データ構造が複雑になるにつれて進化していく
- Naive Bayes → Markov Models: 特徴量の独立性の仮定を、系列方向のマルコフ性に拡張したもの
- Logistic Regression → Linear-Chain CRF: 条件付き分布のモデル化を、系列全体に拡張したもの
- 縦に見ると、同じデータ構造に対して、生成モデルと識別モデルという2つのアプローチが対になっている
- この整理は、Sutton & McCallum (2010) “An Introduction to Conditional Random Fields"が示した、生成・識別モデルの対応関係(generative-discriminative pairs)を、データ構造の軸まで拡張したもの
MeCabとの接続
- MeCabの仕組みで扱ったMeCabのCRFは、まさにこの表のLinear-Chain CRFにあたる。系列ラベリング(形態素解析の分割・品詞タグ付け)という、シーケンスデータへの適用そのもの
- より複雑な依存関係(例えば、文全体の構文木のような、チェーンに収まらない構造)を扱う場合は、表の右下、一般のグラフ構造上のCRFが使われる
まとめ
- 確率的グラフィカルモデルは、「生成か識別か」という軸と、「データ構造が独立・シーケンス・一般グラフのどれか」という軸の組み合わせで整理できる
- Naive BayesからCRFまで、見た目の違うモデルも、この2軸のマッピングの中では同じ位置づけ(generative-discriminative pair)として理解できる
- MeCabのCRFは、この表のシーケンスデータ×識別モデル(Linear-Chain CRF)にあたる
参考文献
- MeCabの仕組み
- Sutton, C., & McCallum, A. (2010). “An Introduction to Conditional Random Fields” (arXiv:1011.4088)
- Ng, A. Y., & Jordan, M. I. (2002). “On Discriminative vs. Generative Classifiers: A comparison of logistic regression and naive Bayes”
- How are Conditional Random Fields Applied to Image Segmentation? - Razorthink AI (Medium)
