目次
背景
- プログラムでの計算で確率を使うことは多い
- しかし、高校の時にやった確率をほとんど忘れてしまった
- すると計算が必要な時に困るので改めて復習した
- また、データ処理で特に間違いやすかったメモも入れた
確率
全体像
「確率」は、大きく分けると次の流れで進む
- 場合の数(数え方)
- 基本的な確率(数え方の比)
- 独立な試行・反復試行
- 条件付き確率
場合の数
事象
- 事象とは、試行(サイコロを振る、カードを引く等)の結果として起こりうる事柄のこと
- 例えば「サイコロを振って偶数の目が出る」も1つの事象
- 事象$A$・事象$B$のように、アルファベットで名前をつけて表すことが多い
樹形図
- 場合の数を数える基本は、樹形図で枝分かれを全て書き出すこと
- 樹形図を一般化した数え方が、次の和の法則と積の法則
和の法則
- 事象$A$がm通り、事象$B$がn通りで、$A$と$B$が同時には起こらないとき
- $A$または$B$の起こり方は$m+n$通り
積の法則
- 事象$A$の起こり方がm通り
- その各々に対して事象$B$の起こり方がn通り
- $A$の後に$B$が続けて起こる場合の数は$m \times n$通り
- 例: サイコロを2回振るときの目の出方は、$6 \times 6 = 36$通り(積の法則)
階乗
- $n!$は、$n$から$1$までを全て掛け合わせたもの
- 定義は以下
- 便宜上、$0! = 1$と定義される
順列
順列(Permutation)の定義
- 異なる$n$個から$r$個を選んで、順序をつけて並べる場合の数
- 定義は以下
- 並び方が違えば別の場合として数える
- 例: A・B・Cの3人から2人を選んで1列に並べる場合、AB・BA・AC・CA・BC・CBの6通り(${}_3P_2 = 6$)
例:順列
- 問題: 1〜9の数字が1つずつ書かれた9枚のカードから3枚を選んで並べ、3桁の整数を作る。何通りできるか?
- 「9個から3個選んで順序をつけて並べる」ので、そのまま順列の定義に当てはまる
- 百の位・十の位・一の位の順に「使えるカードの枚数」を掛けているのと同じこと
- 百の位: 9枚から選べる
- 十の位: 百の位で1枚使った残り8枚から選べる
- 一の位: さらに残り7枚から選べる
- この「1つ選ぶごとに選択肢が1つ減っていく」感覚が、そのまま${}_nP_r$の掛け算の中身になっている
同じものを含む順列
- $n$個のうち、同じものがそれぞれ$p$個、$q$個、$r$個…ずつ含まれるときの並べ方
- 定義は以下
- 全部を区別して並べる${}_nP_n = n!$通りから、同じもの同士の並び替え分を割って重複を消しているイメージ
組み合わせ
組み合わせ(Combination)の定義
- 異なる$n$個から$r$個を選ぶ場合の数(順序は区別しない)
- 定義は以下
- 順列${}_nP_r$を、選んだ$r$個の並び替え分($r!$通り)で割ったものがCのイメージ
- 例: A・B・Cの3人から2人を選ぶだけなら、AB・AC・BCの3通り(${}_3C_2 = 3$)、並び順は数えない
例:組合せを使った基本的な確率
- 問題: 22台の製品のうち3台が故障している。無作為に2台取り出すとき、ちょうど1台が故障している確率は?
- 全体の場合の数(22台から2台選ぶ)
- 条件を満たす場合の数(故障3台から1台、正常19台から1台をそれぞれ選ぶ)
- 求める確率は以下
- ポイントは、「故障からr台・正常から残りを選ぶ」と分けて、それぞれ組合せで数えてから割ること
表記の違い
- 高校では${}_nC_r$と書くが、大学以降や海外の教科書では二項係数の表記を使うことが多い
- 定義は同じで、記号が違うだけ
- 読み方は「$n$ choose $r$」($n$個から$r$個選ぶ)
- 縦に$n$、$r$を並べて大きい括弧で囲む書き方で、割り算の記号は書かない
基本的な確率の求め方
- 全ての場合が同様に確からしいとき、事象$A$の確率は以下
- $n(A)$は事象$A$の場合の数、$n(U)$は全体(全事象)の場合の数
- サイコロ・コイン・カード・くじのような「全パターンのうち何パターンが条件に合うか」を、前述の場合の数(樹形図・和の法則・積の法則・順列・組合せ)で数えれば求まる
- 「少なくとも1つ」「ちょうど1つ」のような条件は、全体からどの部分を数えるかの言い換えに過ぎない
余事象
余事象の定義
- 事象$A$が起こらない事象を余事象と呼び、$\bar{A}$(または$A^c$)と書く
- 全事象の確率は1なので、以下が成り立つ
- 「少なくとも1つは〜」のような計算は、直接数えると場合分けが多くなりがちなので、余事象(1つも〜でない)から引く方が楽なことが多い
例:余事象を使う確率
- 問題: サイコロを3回振るとき、少なくとも1回は6の目が出る確率は?
- 直接数えると「1回だけ6」「2回だけ6」「3回とも6」を別々に足す必要があり面倒
- 余事象「3回とも6が出ない」を考える方が早い
- 1回振って6以外が出る確率は$\frac{5}{6}$なので、3回とも6が出ない確率は以下
- 求める確率は、これを1から引く
和事象と加法定理
- $A$または$B$が起こる確率は以下
- $A$と$B$が同時に起こる部分を二重に数えないよう、その分を引く
- $A$と$B$が同時に起こりえない(排反)場合は$P(A \cap B) = 0$なので、以下まで単純化できる
独立な試行・反復試行
独立な試行・反復試行の定義
- 事象$A$の結果が事象$B$の起こりやすさに一切影響しない場合、$A$と$B$は独立という
- 独立な場合、両方起こる確率は単純な掛け算になる
- 独立でない場合は、そのまま掛け算にはできないので、後述の条件付き確率を使う
- 独立な試行を何度も繰り返すのが反復試行
- 確率$p$で起こる試行を$n$回繰り返したとき、ちょうど$r$回起こる確率は以下
- ${}_nC_r$が出てくる理由は、$n$回のうち「どのタイミングで$r$回起こるか」の組み合わせの数だから
- 例: コインを5回投げて、ちょうど3回表が出る確率、当たり確率$p$のくじを$n$回引いて$r$回当たる確率など
- この考え方をさらに一般化したものが二項分布
例:反復試行の確率(復元抽出)
- 問題: 箱に赤玉2個と白玉2個が入っている。1つ取り出して色を確認し、箱に戻す操作を3回繰り返すとき、赤玉がちょうど2回出る確率は?
- 「取り出して戻す」ので、毎回同じ条件(赤2個・白2個、計4個)で引く独立な試行になる
- 1回で赤が出る確率は以下
- 3回中ちょうど2回赤が出る確率は、反復試行の公式に$n=3, r=2, p=\frac{1}{2}$を当てはめる
- 毎回箱に戻す(復元抽出)から、3回とも独立に同じ確率$\frac{1}{2}$で扱える
- もし戻さない(非復元抽出)なら、回を追うごとに箱の中身が変わるので独立にならず、反復試行の公式は使えない(前述の「組合せを使った基本的な確率」のように直接数える必要がある)
条件付き確率
- $B$が起こったという条件のもとで、$A$が起こる確率
- 定義は以下
- この式を変形すると、一般の乗法定理になる(独立でない場合もこちらを使う)
期待値
- 確率変数$X$が値$x_1, x_2, \dots, x_n$を、それぞれ確率$p_1, p_2, \dots, p_n$でとるとき、期待値は以下
- 試行を何度も繰り返したときに、平均的にどれくらいの値になるかを表す指標
その他
月はカテゴリカル変数
- 1月〜12月を「月の区分」として扱う場合はカテゴリカル変数
- 月は周期的で、12月と1月は隣り合っているため、単純な数値として扱うのは適切でないことが多い
- 一方、「2024年1月 => 2024年2月 => …」のように時間の経過を表す場合は、年月を量的変数として扱える
- つまり、月がややこしい理由は月が2つの意味を持つから
- 3月 = March(時点・カテゴリ) => カテゴリカル変数
- 3か月 = 3 months(期間・量) => 量的変数
- まあ、「郵便番号」は数字だけど、カテゴリカル変数というのと同じ
クロス集計表の切り方
クロス表の分母も結構間違えがち。
例: ワクチンの有効性を説明するにはどう比較すればいいか?
| - | 感染した | 感染しなかった | 合計 |
|---|---|---|---|
| ワクチン未接種 | 100人 | 900人 | 1000人 |
| ワクチン接種済み | 450人 | 8550人 | 9000人 |
| 合計 | 550人 | 9450人 | 10000人 |
2つの見方がある。
| 見方 | 計算 | 何がわかる? |
|---|---|---|
| A | (100/550)、(450/550) | 感染した人の中で、接種・未接種がどれくらいいるか |
| B | (100/1000)、(450/9000) | 接種した人・していない人の中で、どれくらい感染したか |
- この場合は、適切なのは、AではなくBとなる
- 理由は、Aだと、そもそも論、ワクチン接種者の方が多い可能性があり、ワクチン自体の有効性を示せないから
- Bはワクチンを摂取した人の中で、という事になっている
言い換えると次になる:
- A: 感染者のワクチンを接種したしていない人の“確率”を見る
- B: ワクチンを接種した人と接種していない人の感染する“確率”を見る
Aだと、何人ワクチンを接種していたのかが加味されていないため、ワクチンの有効性を示す上では不適切ということ。
確率の直感の罠
例:
- 10の中に2つのあたりがあるくじ
- AとBがいる
- Aが先に引いた後に、Bが引く順番でくじを引く
- Bの確率はどうなるのか?
一見、Aが引いた後に、Bが引くから確率が変わりそうだが実際は変わらない。
$$ A=2/10 B=2/10 \times 1/9 + 8/10 \times 2/9 = \frac{2+16}{90} = 18/90 = 2/10 $$つまり、Aさんが先に引いても、Bさんが先に引いても同じということ。
ちなみに、もしAさんの結果をBさんが知れる場合は、総合的には以下になる。
- Aの結果を知った場合:
- $P(Bあたり|Aあたり)1/9=0.111$
- $P(Bあたり|Aハズレ)=2/9=0.222$
- Aの結果を知らない場合:
- $P(Bあたり)=2/10=0.2$
だから、事前条件を知った上だと、より精緻な確率になるということ。
確率の直感の罠②
モンティホール問題は、直感と実際の確率がずれやすい有名な例。
例:
- 3つのドアがある
- 1つだけ当たりで、残り2つはハズレ
- Aさんが最初に1つのドアを選ぶ
- 司会者は当たりの場所を知っていて、Aさんが選んでいないドアの中から必ずハズレを1つ開ける
- その後、Aさんは「最初に選んだドアのままにする」か「残ったもう1つのドアに変更する」かを選べる
一見、最後には2つのドアしか残っていないので、以下に見える。
$$ 1/2 $$しかし実際には、以下となる。
- 最初に選んだドアが当たりである確率は$1/3$
- 最初に選んだドアがハズレである確率は$2/3$
言い換えると、
- つまり、最初に当たりを選んでいた場合、ドアを変更するとハズレになる
- 一方、最初にハズレを選んでいた場合、司会者は残ったハズレを必ず開けるため、ドアを変更すれば必ず当たりになる
したがって、以下となる。
$$ P(\text{変更せずに当たる}) = 1/3 $$$$ P(\text{変更して当たる}) = 2/3 $$- つまり、ドアを変更した方が当たる確率は2倍になる
- ポイントは、司会者がランダムにドアを開けているわけではなく、当たりを知ったうえで必ずハズレを開けていること
- そのため、「最後に2つ残ったから確率は $1/2$ ずつ」とはならない
- 確率を考えるときは、単に残っている選択肢の数を見るのではなく、どのようなルールで情報が得られたのかを見る必要がある
PPDACサイクル
- 統計的な問題解決の進め方を5つのステップに整理したフレームワーク
- Problem(問題)・Plan(計画)・Data(データ)・Analysis(分析)・Conclusion(結論)の頭文字
- 各ステップの内容
- Problem: 何を明らかにしたいか、問題を明確にする
- Plan: どうやって調べるか、調査方法やデータの集め方を計画する
- Data: 計画に沿ってデータを収集・整理する
- Analysis: データを分析し、パターンや傾向を見出す
- Conclusion: 分析結果から結論を導き、Problemに立ち返って答える
- Conclusionの結果、新たな疑問が生まれた場合は、それを次のProblemとしてサイクルを繰り返す
- 統計は計算そのものより、このサイクル全体を意識することが大切
まとめ
- 計算しましょう!
