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確率の復習

目次

背景

  • プログラムでの計算で確率を使うことは多い
  • しかし、高校の時にやった確率をほとんど忘れてしまった
  • すると計算が必要な時に困るので改めて復習した
  • また、データ処理で特に間違いやすかったメモも入れた

場合の数

場合の数とは

  • 場合の数とは、ある事柄の起こり方が何通りあるかを数えた数のこと
  • 例えば、サイコロを1回振ったときに出る目は1〜6の6通りで、これが「サイコロの目の出方の場合の数」
  • 「偶数の目が出る」という事柄に限れば、2・4・6の3通りなので、この事柄の場合の数は3
  • 確率を求めるには、まずこの場合の数を正確に数えられる必要があるため、樹形図・和の法則・積の法則・順列・組合せといった数え方を先に整理する

ラプラスの定義

  • 場合の数を使った、確率の最も基本的な定義がラプラスの定義
$$ P(A) = \frac{\text{事柄}A\text{の場合の数}}{\text{全事象の場合の数}} $$
  • 全ての場合が同様に確からしいことが前提になる

試行・事象・余事象

試行とは

  • 試行とは、サイコロを振る・カードを引くといった、結果が偶然によって決まる行為や実験のこと

事象とは

  • 事象とは、試行の結果として起こりうる事柄のことで、標本空間(全事象)の部分集合にあたる
  • 例えば「サイコロを振って偶数の目が出る」も1つの事象
  • 事象$A$・事象$B$のように、アルファベットで名前をつけて表すことが多い

余事象とは

  • 事象$A$が起こらない事象を余事象と呼び、$\bar{A}$(または$A^c$)と書く
  • 具体的な計算例は後述の余事象のセクションで扱う

樹形図

  • 場合の数を数える基本は、樹形図で枝分かれを全て書き出すこと
  • 樹形図を一般化した数え方が、次の和の法則と積の法則

和と積の法則

和の法則

  • 事象$A$がm通り、事象$B$がn通りで、$A$と$B$が同時には起こらないとき
  • $A$または$B$の起こり方は$m+n$通り
$$ n(A \cup B) = n(A) + n(B) \qquad (A \cap B = \emptyset) $$

積の法則

  • 事象$A$の起こり方がm通り
  • その各々に対して事象$B$の起こり方がn通り
  • $A$の後に$B$が続けて起こる場合の数は$m \times n$通り
  • 例: サイコロを2回振るときの目の出方は、$6 \times 6 = 36$通り(積の法則)
$$ n(A \times B) = n(A) \times n(B) $$

包除原理(Inclusion-Exclusion)

  • 和の法則は、$A$と$B$が排反(同時に起こらない)であることが前提
  • $A$と$B$が重なりうる場合は、重複分を引く必要がある
$$ n(A \cup B) = n(A) + n(B) - n(A \cap B) $$
  • 例: トランプ1枚を引いて「ハートが出る」(13通り)か「ジャックが出る」(4通り)の場合の数は、ハートのジャック(1通り)が重複するため、$13+4-1=16$通り。単純に$13+4=17$通りとするのは誤り

階乗

  • $n!$は、$n$から$1$までを全て掛け合わせたもの
  • 定義は以下
$$ n! = n \times (n-1) \times (n-2) \times \cdots \times 1 $$
  • 便宜上、$0! = 1$と定義される

順列(Permutation)

順列の定義

  • 異なる$n$個から$r$個を選んで、順序をつけて並べる場合の数
  • 定義は以下
$$ {}_nP_r = n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1) = \frac{n!}{(n-r)!} $$
  • 並び方が違えば別の場合として数える
  • 例: A・B・Cの3人から2人を選んで1列に並べる場合、AB・BA・AC・CA・BC・CBの6通り(${}_3P_2 = 6$)

順列の定義の意味

  • たとえば、A・B・Cの3人から2人を選んで、1列に並べるとする
$$ AB \\ AC \\ BA \\ BC \\ CA \\ CC $$
  • 3x2=6の6通りになる
$$ \underbrace{3}_{1番目の選び方} \times \underbrace{2}_{それぞれに対する2番目の選び方} =6 $$
  • 「最初の選択が3通りあり、そのそれぞれについて次の選択が2通りあるなら、全部で $3\times2$ 通り」
  • これを一般化して、異なる $n$個から$r$個を選んで並べる
  • 1番目はn通り
  • 1つ使ったので、2番目はn-1通り
  • さらに1つ使ったので、3番目はn-2通り
  • そして、r番目まで来ると、$n-r+1$通りまで残っている
$$ {}_nP_r = n(n-1)(n-2)\cdots(n-r+1) $$
  • では、なぜ階乗になるのか?
  • 順列で欲しいのは、途中のところまで
$$ n(n-1)\cdots(n-r+1) $$
  • 例えば、7P3なら、7x6x5までほしい
  • しかし、7!での余計な4x3x2x1を除く
  • 従って、以下になる
$$ {}_7P_3 = \frac{7!}{4!} = \frac{7!}{(7-3)!} $$
  • これをnとrで一般化すると、以下になる
$$ n! = \underbrace{n(n-1)\cdots(n-r+1)}_{\text{欲しい部分}} \times \underbrace{(n-r)(n-r-1)\cdots1}_{(n-r)!} $$
  • だから、両辺を $(n-r)!$ で割ると、以下になる
$$ \boxed{ {}_nP_r=\frac{n!}{(n-r)!} } $$

例:順列

問題: 1〜9の数字が1つずつ書かれた9枚のカードから3枚を選んで並べ、3桁の整数を作る。何通りできるか?

「9個から3個選んで順序をつけて並べる」ので、そのまま順列の定義に当てはまる。

$$ {}_9P_3 = 9 \times 8 \times 7 = 504 $$

同じものを含む順列

  • $n$個のうち、同じものがそれぞれ$p$個、$q$個、$r$個…ずつ含まれるときの並べ方
  • 定義は以下
$$ \frac{n!}{p! \, q! \, r! \cdots} $$
  • 全部を区別して並べる${}_nP_n = n!$通りから、同じもの同士の並び替え分を割って重複を消しているイメージ

組み合わせ(Combination)

組み合わせの定義

  • 異なる$n$個から$r$個を選ぶ場合の数(順序は区別しない)
  • 定義は以下
$$ {}_nC_r = \frac{n!}{r!(n-r)!} = \frac{{}_nP_r}{r!} $$
  • 順列${}_nP_r$を、選んだ$r$個の並び替え分($r!$通り)で割ったものがCのイメージ
  • 例: A・B・Cの3人から2人を選ぶだけなら、AB・AC・BCの3通り(${}_3C_2 = 3$)、並び順は数えない

コンビネーションの表記の違い

  • 高校では${}_nC_r$と書くが、大学以降や海外の教科書では二項係数の表記を使うことが多い
  • 定義は同じで、記号が違うだけ
$$ \binom{n}{r} = {}_nC_r = \frac{n!}{r!(n-r)!} $$
  • 読み方は「$n$ choose $r$」($n$個から$r$個選ぶ)
  • 縦に$n$、$r$を並べて大きい括弧で囲む書き方で、割り算の記号は書かない

順列かコンビネーションかの見極め方

  • 判断基準は、「入れ替えたら別物になるかどうか」
    • 定義的に、順列はnPr、組み合わせはnPr/r!となっている
    • 組み合わせはr!分だけ重複を取り除いている
  • 例
    • 「5人から委員を2人選ぶ」→ Combination
    • 「5人から会長と副会長を選ぶ」→ Permutation
  • つまり、選ぶだけ -> Combination、選んだ後に「誰がどの役割か」まで決める -> Permutation

例: コンビネーション

問題: 22台の製品のうち3台が故障している。無作為に2台取り出すとき、ちょうど1台が故障している確率は?

2つの考え方がある。

  • 2つ引いた中で、故障から1台、正常から1台の考え方
$$ \frac{{}_3C_1\times{}_{19}C_1}{{}_{22}C_2} $$
  • 順番に引く確率を計算して、「故障->正常」「正常->故障」の2通りを加算する
$$ \frac{3}{22}\times\frac{19}{21} + \frac{19}{21}\times\frac{3}{22} $$
  • それ順番に引く確率 × 並び方2通りのcombinationなので以下でもOK
$$ {}_2C_1\times \frac{3}{22}\times\frac{19}{21} $$
  • どちらも19/77

独立と排反

排反とは

  • 2つの事象が同時には起こらないことを排反という
  • 例えば、サイコロを1回振ったとき、「1が出る」と「2が出る」は同時に起こらないため排反
  • 排反な事象同士は、確率・場合の数ともに単純に足し合わせられる(和の法則)

独立とは

  • 事象$A$が起きたかどうかによって、事象$B$の起こりやすさ(確率)が変わらないことを独立という
  • 例えば、雨が降る確率と傘をさす確率は、雨が降ったら傘をさす確率が上がるため独立ではない
  • 独立な場合、両方起こる確率は単純な掛け算になる。詳しくは後述の独立な事象・独立な試行で扱う

排反と独立は別概念

  • 排反と独立は似た言葉に見えるが、別の概念。排反かつ両方の確率が非ゼロの事象同士は、独立になりえない
  • 独立なら$P(A\cap B)=P(A)\times P(B)$が成り立つはずだが、排反なら$P(A\cap B)=0$なので、$P(A)\times P(B)=0$が要求される
  • $P(A)>0$かつ$P(B)>0$ならこれは矛盾するので、排反な事象同士は独立ではない
  • むしろ排反な事象は、$A$が起きたと分かった瞬間に$B$が絶対に起きないと確定する、最も強い依存関係を持っている

基本的な確率

確率とは

  • 確率とは、ある事象がどれだけ起こりやすいかを、0以上1以下の数値で表したもの
  • 試行で起こりうる結果全体の集合を標本空間(全事象)と呼び、$U$や$\Omega$と書く
  • 確率には、直感的に以下の性質が成り立つ
    • 全事象$U$が起こる確率は1
    • どの事象の確率も0以上
    • 排反な事象同士(同時には起こらない事象同士)が起こる確率は、それぞれの確率の和になる
  • この性質を出発点に、余事象・和事象・条件付き確率といった具体的な計算ルールが導かれていく

基本的な確率の求め方

  • 全ての場合が同様に確からしいとき、事象$A$の確率は以下
$$ P(A) = \frac{n(A)}{n(U)} $$
  • $n(A)$は事象$A$の場合の数、$n(U)$は全体(全事象)の場合の数
  • サイコロ・コイン・カード・くじのような「全パターンのうち何パターンが条件に合うか」を、前述の場合の数(樹形図・和の法則・積の法則・順列・組合せ)で数えれば求まる
  • 「少なくとも1つ」「ちょうど1つ」のような条件は、全体からどの部分を数えるかの言い換えに過ぎない

余事象

余事象の定義

  • 事象$A$が起こらない事象を余事象と呼び、$\bar{A}$(または$A^c$)と書く
  • 全事象の確率は1なので、以下が成り立つ
$$ P(A) + P(\bar{A}) = 1 $$
  • 「少なくとも1つは〜」のような計算は、直接数えると場合分けが多くなりがちなので、余事象(1つも〜でない)から引く方が楽なことが多い

例:余事象の考え方

コインを5回投げて「表が2回以上出る確率」

  • 数直線で考えるとわかりやすい
  • $X \ge 2$が表が二回以上でる確率なので、$0, 1$の二パターンになる
1
2
3
---+---+---+---+---+---+---
   0   1   2   3   4   5
           <- 求めたい ->

例:余事象を使う確率

問題: サイコロを3回振るとき、少なくとも1回は6の目が出る確率は?

  • 直接数えると「1回だけ6」「2回だけ6」「3回とも6」を別々に足す必要があり面倒
  • 例えば、1回目の6と3回目の6を区別しないのでcombinationになる
$$ P(\text{1回だけ6}) = {}_3C_1 \left(\frac16\right) \left(\frac56\right)^2 $$$$ P(\text{2回だけ6}) = {}_3C_2 \left(\frac16\right)^2 \left(\frac56\right) $$$$ P(\text{3回とも6}) = \left(\frac16\right)^3 $$

ゆえに、以下になる。

$$ {}_3C_1\left(\frac16\right)\left(\frac56\right)^2 + {}_3C_2\left(\frac16\right)^2\left(\frac56\right) + \left(\frac16\right)^3 $$
  • 余事象「3回とも6が出ない」を考える方が早い

  • 1回振って6以外が出る確率は$\frac{5}{6}$なので、3回とも6が出ない確率は以下

$$ \left(\frac{5}{6}\right)^3 = \frac{125}{216} $$
  • 求める確率は、これを1から引く
$$ 1 - \frac{125}{216} = \frac{91}{216} $$

和事象と加法定理

  • $A$または$B$が起こる確率は以下
  • $A$と$B$が同時に起こる部分を二重に数えないよう、その分を引く
$$ P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B) $$
  • $A$と$B$が同時に起こりえない(排反)場合は$P(A \cap B) = 0$なので、以下まで単純化できる
$$ P(A \cup B) = P(A) + P(B) $$

独立性と反復試行

独立な事象

  • 独立とは「Aを知っても Bの確率が変わらない」こと
  • 雨降る確率と傘をさす確率が合った時に、雨が降った時に傘をさす確率が変わらなければ独立の事象となる
  • 当然、雨降ったら傘を指す確率が上がるので、その2つは独立ではない

独立な試行・反復試行の定義

  • 事象$A$の結果が事象$B$の起こりやすさに一切影響しない場合、$A$と$B$は独立という
  • 独立な場合、両方起こる確率は単純な掛け算になる
$$ P(A \cap B) = P(A) \times P(B) $$
  • 独立でない場合は、そのまま掛け算にはできないので、後述の条件付き確率を使う
  • 独立な試行を何度も繰り返すのが反復試行
  • 確率$p$で起こる試行を$n$回繰り返したとき、ちょうど$r$回起こる確率は以下
$$ {}_nC_r \, p^r (1-p)^{n-r} $$
  • ${}_nC_r$が出てくる理由は、$n$回のうち「どのタイミングで$r$回起こるか」の組み合わせの数だから
  • 例: コインを5回投げて、ちょうど3回表が出る確率、当たり確率$p$のくじを$n$回引いて$r$回当たる確率など
  • この考え方をさらに一般化したものが二項分布

例:反復試行の確率(復元抽出)

問題: 箱に赤玉2個と白玉2個が入っている。1つ取り出して色を確認し、箱に戻す操作を3回繰り返すとき、赤玉がちょうど2回出る確率は?

  • 「取り出して戻す」ので、毎回同じ条件(赤2個・白2個、計4個)で引く独立な試行になる
  • 1回で赤が出る確率は以下
$$ p = \frac{2}{4} = \frac{1}{2} $$
  • 3回中ちょうど2回赤が出る確率は、反復試行の公式に$n=3, r=2, p=\frac{1}{2}$を当てはめる
$$ {}_3C_2 \left(\frac{1}{2}\right)^2 \left(\frac{1}{2}\right)^1 = 3 \times \frac{1}{8} = \frac{3}{8} $$
  • 毎回箱に戻す(復元抽出)から、3回とも独立に同じ確率$\frac{1}{2}$で扱える
  • もし戻さない(非復元抽出)なら、回を追うごとに箱の中身が変わるので独立にならず、反復試行の公式は使えない(前述の「組合せを使った基本的な確率」のように直接数える必要がある)

同時確率と条件付き確率

同時確率

独立の時の同時確率の定義

独立の時の同時確率は、以下のように定義できる。

$$ P(A \cap B) = P(A)P(B) $$

例えば、コインが表になる確率とサイコロの6の出目がでる同時確率は以下になる。

$$ P(A \cap B) = \frac{1}{2} \times \frac{1}{6} = \frac{1}{12} $$

同時確率と条件付き確率

同時確率は次のように定義される。

$$ P(A \cap B)=P(B)P(A∣B) $$
  • コイントスとサイコロのような独立している場合は$P(A|B)=P(A)$だったということ
  • つまり、条件付き確率で表す同時確率は一般化した形ということ

同時確率の2つの定義

一般的な定義(乗法定理):

$$ P(A \cap B)=P(B)P(A∣B) $$

AとBが独立している場合の特殊形:

$$ P(A \cap B)=P(B)P(A) $$

周辺確率

周辺確率とは

  • 周辺確率とは、複数の変数の同時確率から、着目しない変数を全て足し合わせて(周辺化して)消し、残った変数だけの確率にしたもの
  • $A$・$B$それぞれが起こる/起こらないの2×2で、同時確率の表を作ると整理しやすい
-$B$$\bar{B}$合計
$A$$P(A,B)$$P(A,\bar{B})$$P(A)$
$\bar{A}$$P(\bar{A},B)$$P(\bar{A},\bar{B})$$P(\bar{A})$
合計$P(B)$$P(\bar{B})$$1$
  • 表の右端・下端(合計の行・列)が、それぞれ周辺確率にあたる
  • どちらの変数を固定し、どちらを場合分けして消すかで、2通りの周辺化ができる

① P(A)を求める

$B$と$\bar{B}$で場合分けして、$A$の行を合計する。

$$ P(A) = P(A,B) + P(A,\bar{B}) \\ = P(A)P(B\mid A) + P(A)P(\bar{B}\mid A) \\ = P(A)\{P(B\mid A) + P(\bar{B}\mid A)\} $$
  • $P(B\mid A) + P(\bar{B}\mid A) = 1$
  • $A$が起きた前提のもとでは、$B$か$\bar{B}$のどちらかは必ず起こる
  • なので、以下になる
$$ P(A) = P(A) $$
  • つまりこれは恒等式で、$P(A)$を求めるのには使えない(右辺に$P(A)$自身が残ったまま)
  • 既に$A$で条件付けした確率($P(B\mid A)$など)を使って$A$自身を求めようとしても、堂々巡りになるのは自然なこと

② P(B)を求める

今度は$A$と$\bar{A}$で場合分けして、$B$の列を合計する。

$$ P(B) = P(A,B) + P(\bar{A},B) \\ = P(A)P(B\mid A) + P(\bar{A})P(B\mid \bar{A}) $$
  • こちらは、右辺に$P(B)$自身が出てこず、$P(A)$・$P(\bar{A})$・$P(B\mid A)$・$P(B\mid \bar{A})$という別の量だけで計算できる
  • これが、後述のベイズの定理で分母$P(B)$を計算する際に使う式(全確率の定理)そのもの
  • 一般に、事象$A$が$A_1, A_2, \ldots, A_n$のように互いに排反な$n$個に分割できる場合、以下のように一般化できる
$$ P(B) = \sum_{i=1}^{n} P(B \mid A_i) P(A_i) $$

ポイント:

  • 周辺化したい変数(今回は$B$)とは別の変数($A$)で場合分けすること
  • 同じ変数で場合分けすると①のように恒等式に潰れてしまい、意味のある計算にならない

条件付き確率

条件付き確率の定義

  • $B$が起こったという条件のもとで、$A$が起こる確率
  • 定義は以下
$$ P(A \mid B) = \frac{P(A \cap B)}{P(B)} $$
  • 例: 100人中女性が60人、女性かつ賛成が36人のとき、「女性」という条件のもとで賛成する確率は$36/60=0.6$

乗法定理

  • 条件付き確率の式を変形すると、一般の乗法定理になる(独立でない場合もこちらを使う)
$$ P(A \cap B) = P(B) \times P(A \mid B) $$

ベイズの定理

  • 条件付き確率$P(A \mid B)$と、逆向きの条件付き確率$P(B \mid A)$を結びつける定理
  • 定義は以下
$$ P(A \mid B) = \frac{P(B \mid A) \, P(A)}{P(B)} $$
  • 分母$P(B)$は、$A$が起きた場合と起きなかった場合に分けて計算できる(全確率の定理)
$$ P(B) = P(B \mid A) P(A) + P(B \mid \bar{A}) P(\bar{A}) $$

ベイズの定理②

つまり、ベイズの定理は式変形すると、同時確率を2つの形で表しているということ。

$$ P(A \mid B) P(B) = P(B \mid A) P(A) $$

条件付き確率→乗法定理→同時確率を2通りに表す→ベイズの定理という流れ。

例:ベイズの定理を使った確率

問題: 良品の確率は98%、不良品の確率は2%。チェック工程で良品を良品と判断する確率は99%、不良品を不良品と判断する確率は99%。不良品と判断されたものが、実際に不良品である確率は何%か?

事象を整理する:

  • 真不:本当に不良品である($P(\text{真不}) = 0.02$)
  • 真良:本当に良品である($P(\text{真良}) = 0.98$)
  • 判不:チェック工程で不良品と判断されること
  • 判正:チェック工程で良品と判断されること

Confusion Matrix:

  • $P(\text{判不} \mid \text{真不}) = 0.99$
  • $P(\text{判不} \mid \text{真良}) = 0.01$
  • $P(\text{判正} \mid \text{真不}) = 0.01$
  • $P(\text{判正} \mid \text{真良}) = 0.99$

求めたいのは$P(\text{真不} \mid \text{判不})$(不良と判定されたとき、本当に不良である確率)。

まず分母$P(\text{判不})$を全確率の定理で計算する。

$$ P(\text{判不}) = P(\text{判不} \mid \text{真不})P(\text{真不}) + P(\text{判不} \mid \text{真良})P(\text{真良}) = 0.99 \times 0.02 + 0.01 \times 0.98 = 0.0296 $$
  • ベイズの定理に代入する
$$ P(\text{真不} \mid \text{判不}) = \frac{P(\text{判不} \mid \text{真不}) P(\text{真不})}{P(\text{判不})} = \frac{0.99 \times 0.02}{0.0296} \approx 0.669 $$
  • 不良品と判断されたものが実際に不良品である確率は約66.9%
  • 検査自体の精度(99%)は高いのに、実際に不良品と判定されたものが本当に不良品である確率は約7割にとどまる。理由は、そもそもの不良品の発生率(2%)が低く、母数の多い良品側から生まれる誤判定(偽陽性)の実数が無視できないほど積み重なるため

条件付き確率の可視化

条件付き確率の例

  • P(A) = 雨が降る確率
  • P(B) = 傘をさす確率
  • これらが互いに独立なら、P(A) = P(B|A) となる
  • つまり、独立なら、傘をさす確率 = 雨が振っている時に傘をさす確率
  • 他方独立ではないなら、等式にならない
  • 条件付き確率は面積で考えるとわかりやすい
    • $P(B\mid A) = \frac{\text{AとBが同時に起きる確率}} {\text{Aが起きる確率}} = \frac{P(A\cap B)} {P(A\cap B)+P(A\cap \neg B)}$
  • つまり、条件付き確率は面積の割合という事

独立の場合

前提として、次の確率だったとする。

$$ P(A) = 0.40 $$$$ P(B)=0.60 $$

独立の場合

  • Aになる確率
$$ P(A)=P(A\cap B)+P(A\cap \neg B)=0.4 $$
  • Aにならない確率
$$ P(\neg A)=1-P(A)=P(\neg A\cap B)+P(\neg A\cap \neg B)=0.6 $$
  • Bになる確率
$$ P(B)=P(A\cap B)+P(\neg A\cap B)=0.6 $$
  • Bにならない確率
$$ P(\neg B)=1-P(B) \\ =P(A\cap \neg B)+P(\neg A\cap \neg B)=0.4 $$
  • また、今回の数値では
$$ P(\neg A\cap B)+P(\neg A\cap \neg B) = P(A\cap B)+P(\neg A\cap B) \\ = 0.36+0.24=0.24+0.36=0.6 $$
  • AのときにBになる確率
$$ P(B\mid A) = P(B) = \frac{P(A\cap B)} {P(A\cap B)+P(A\cap \neg B)} = 0.60 $$
  • AではないときにBになる確率
$$ P(B\mid \neg A) = \frac{P(\neg A\cap B)} {P(\neg A\cap \neg B)+P(\neg A\cap B)} = 0.60 $$
  • 独立の場合
$$ P(B\mid A)=P(B\mid \neg A)=P(B)=0.60 $$

一般的な場合

前提として、次の確率だったとする。

$$ P(A)=0.4 $$$$ P(B\mid A)=0.8 $$$$ P(B\mid \neg A)=0.3 $$

一般的な場合

  • Aになる確率
$$ P(A)=P(A\cap B)+P(A\cap \neg B) \\ =0.32+0.08=0.40 $$
  • Aにならない確率
$$ P(\neg A)=1-P(A)=P(\neg A\cap B)+P(\neg A\cap \neg B) \\ =0.18+0.42=0.60 $$
  • Bになる確率
$$ P(B)=P(A\cap B)+P(\neg A\cap B) \\ =0.32+0.18=0.50 $$
  • Bにならない確率
$$ P(\neg B)=1-P(B)=P(A\cap \neg B)+P(\neg A\cap \neg B) \\ =0.08+0.42=0.50 $$
  • AのときにBになる確率
$$ P(B\mid A) = \frac{P(A\cap B)}{P(A\cap B)+P(A\cap \neg B)} = \frac{0.32}{0.32+0.08} \\ = 0.80 $$
  • AではないときにBになる確率
$$ P(B\mid \neg A) = \frac{P(\neg A\cap B)} {P(\neg A\cap B)+P(\neg A\cap \neg B)} = \frac{0.18}{0.18+0.42} \\ = 0.30 $$
  • 全確率の公式からBになる確率を求める
$$ P(B) = P(B\mid A)P(A) + P(B\mid \neg A)P(\neg A) $$$$ = 0.80\times0.40 + 0.30\times0.60 $$$$ = 0.32+0.18 = 0.50 $$
  • 今回は独立ではない
$$ P(B\mid A)=0.80 $$$$ P(B\mid \neg A)=0.30 $$$$ P(B)=0.50 $$

したがって、

$$ P(B\mid A)\neq P(B\mid \neg A)\neq P(B) $$

なので、AとBは独立ではない。

確率論の基本公式

ベイズの定理までの流れ

  • 同時確率は、A が起きた上で B が起きる確率として
$$ P(A,B)=P(A)P(B|A) \tag{①} $$
  • これを \(P(B|A)\) について変形すると、
$$ P(B|A)=\frac{P(A,B)}{P(A)} \tag{②} $$
  • また、A が起きている場合は、その中で
    • B が起きる
    • B が起きない のどちらかなので、
$$ P(A) = P(A)P(B|A) + P(A)P(\bar B|A) $$
  • ②の分子 \(P(A,B)\) に①を代入すると
$$ P(B|A) = \frac{P(A)P(B|A)}{P(A)} $$
  • \(P(A)\) が約分されるので、
$$ P(B|A)=P(B|A) $$

となる(当然)。

  • これは新しい公式ではなく、もとの定義を代入して元に戻っただけ。
  • ベイズの定理で重要なのは、同じ同時確率 \(P(A,B)\) を逆方向からも書けること。
  • A を基準にすると、
$$ P(A,B)=P(A)P(B|A) $$
  • B を基準にすると、
$$ P(A,B)=P(B)P(A|B) \tag{③} $$
  • この2つは、どちらも同じ $A\cap B$ の面積を表しているので、
$$ P(A)P(B|A) = P(B)P(A|B) \tag{④} $$
  • ④を $P(A|B)$ について解くと、
$$ P(A|B) = \frac{P(A)P(B|A)}{P(B)} $$
  • これがベイズの定理。

  • 当然、両辺に $P(B)$ を掛けると、

$$ P(A|B)P(B) = P(A)P(B|A) $$
  • となり、これは④とまったく同じ意味。
  • つまりベイズの定理の本質は、
$$ P(A\cap B) = P(A)P(B|A) = P(B)P(A|B) $$
  • という「同じ $A\cap B$ の面積を、A側から見るかB側から見るか」という関係を利用して、
$$ P(B|A) \longrightarrow P(A|B) $$

と条件の向きを逆転させること。

  • なお、ベイズの定理の分母のP(B)については次のようにとく
$$ P(B) = P(A)P(B|A) + P(\bar A)P(B|\bar A) $$
  • これは面積の合算をしているということ

確率の基本公式のまとめ

周辺確率の表と条件付き確率の表を覚えておくとわかりやすい。

項目式
同時確率$P(A,B)=P(A)P(B\mid A)$
条件付き確率$P(B\mid A)=\frac{P(A,B)}{P(A)}$
条件付き確率の和$P(A)=P(A)P(B\mid A)+P(A)P(\bar B\mid A)$
ベイズの前提$P(A,B)=P(A)P(B\mid A)=P(B)P(A\mid B)$
ベイズの定理$P(A\mid B)=\frac{P(B\mid A)P(A)}{P(B)}$
ベイズの定理の分母(周辺確率)$P(B)=P(A)P(B\mid A)+P(\bar A)P(B\mid \bar A)$

周辺確率はP(B)を求める場合は、P(B)を右辺に入れないのがポイント。

期待値

確率変数

確率変数とは

  • 確率変数とは、試行の結果に応じて値が定まる変数のこと
  • 例えば、サイコロを1回振ったときの出目を$X$とすると、$X$は1〜6のいずれかの値を確率的に取る確率変数になる
  • 事象が「起こる/起こらない」という集合的な捉え方だったのに対し、確率変数はそれを数値として扱えるようにしたもの
  • 取りうる値が1, 2, 3, …のように飛び飛びの離散型と、身長・時間のように連続的な値を取る連続型がある
  • $P(X=x_i)$のように書くと、「確率変数$X$が値$x_i$を取る確率」を表せる

事象と確率変数の関係

事象・確率変数・指示確率変数(後述)の関係を整理すると、以下のようになる。

  • 事象=集合(起こる/起こらないという二値的な捉え方)
  • 確率変数=関数(標本空間の各結果に数値を対応させる、一般にはもっと多くの値を取れる)
  • 指示確率変数=関数で「事象を0/1の値だけを取る確率変数として表現したもの」
  • 指示関数は確率変数の特殊系ということ

期待値

  • 確率変数$X$が値$x_1, x_2, \dots, x_n$を、それぞれ確率$p_1, p_2, \dots, p_n$でとるとき、期待値は以下
$$ E(X) = \sum_i x_i p_i $$
  • 試行を何度も繰り返したときに、平均的にどれくらいの値になるかを表す指標

指示関数(指示確率変数)

指示関数の定義

  • 事象$A$が起きたら1、起きなければ0を返す関数を指示関数(指示確率変数)と呼び、$\mathbb{1}_A$や$I_A$と書く
  • 定義は以下
$$ \mathbb{1}_A(\omega) = \begin{cases} 1 & (\omega \in A) \\ 0 & (\omega \notin A) \end{cases} $$
  • 「試行の結果$\omega$に応じて値が決まる」という確率変数の定義そのものを満たしているので、$\mathbb{1}_A$自体が確率変数になっている(0と1の2値しか取らない、一番単純な確率変数)

例: 指示関数

  • 例: サイコロの出目で「偶数の目が出る」という事象を$A$とすると、$\mathbb{1}_A$は出目が偶数なら1、奇数なら0を返す確率変数になる
  • 指示確率変数の期待値を計算すると、以下のようにその事象の確率そのものになる
$$ E(\mathbb{1}_A) = 1 \times P(A) + 0 \times P(\bar{A}) = P(A) $$
  • つまり「事象$A$の確率」と「指示確率変数$\mathbb{1}_A$の期待値」は同じものであり、事象・確率・確率変数・期待値という一連の概念がこの一本の式でつながっている

その他

確率の直感の罠

例:

  • 10の中に2つのあたりがあるくじ
  • AとBがいる
  • Aが先に引いた後に、Bが引く順番でくじを引く
  • Bの確率はどうなるのか?

一見、Aが引いた後に、Bが引くから確率が変わりそうだが実際は変わらない。

$$ A=2/10 B=2/10 \times 1/9 + 8/10 \times 2/9 = \frac{2+16}{90} = 18/90 = 2/10 $$

つまり、Aさんが先に引いても、Bさんが先に引いても同じということ。

ちなみに、もしAさんの結果をBさんが知れる場合は、総合的には以下になる。

  • Aの結果を知った場合:
    • $P(Bあたり|Aあたり)1/9=0.111$
    • $P(Bあたり|Aハズレ)=2/9=0.222$
  • Aの結果を知らない場合:
    • $P(Bあたり)=2/10=0.2$

だから、事前条件を知った上だと、より精緻な確率になるということ。

確率の直感の罠②

モンティホール問題は、直感と実際の確率がずれやすい有名な例。

例:

  • 3つのドアがある
  • 1つだけ当たりで、残り2つはハズレ
  • Aさんが最初に1つのドアを選ぶ
  • 司会者は当たりの場所を知っていて、Aさんが選んでいないドアの中から必ずハズレを1つ開ける
  • その後、Aさんは「最初に選んだドアのままにする」か「残ったもう1つのドアに変更する」かを選べる

一見、最後には2つのドアしか残っていないので、以下に見える。

$$ 1/2 $$

しかし実際には、以下となる。

  • 最初に選んだドアが当たりである確率は$1/3$
  • 最初に選んだドアがハズレである確率は$2/3$

言い換えると、

  • つまり、最初に当たりを選んでいた場合、ドアを変更するとハズレになる
  • 一方、最初にハズレを選んでいた場合、司会者は残ったハズレを必ず開けるため、ドアを変更すれば必ず当たりになる

したがって、以下となる。

$$ P(\text{変更せずに当たる}) = 1/3 $$$$ P(\text{変更して当たる}) = 2/3 $$
  • つまり、ドアを変更した方が当たる確率は2倍になる
  • ポイントは、司会者がランダムにドアを開けているわけではなく、当たりを知ったうえで必ずハズレを開けていること
  • そのため、「最後に2つ残ったから確率は $1/2$ ずつ」とはならない
  • 確率を考えるときは、単に残っている選択肢の数を見るのではなく、どのようなルールで情報が得られたのかを見る必要がある

まとめ

  • 計算しましょう!
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