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分布関係図

目次

背景

  • 確率分布は、正規分布・カイ二乗分布・t分布・F分布のように、それぞれ独立に暗記するものだと思われがち
  • しかし実際には、これらの分布は特殊ケース・変換・極限・ベイズ的な関係によって、互いに繋がったネットワークを成している
  • Leemis & McQuestonは、この繋がりを1枚の図にまとめた
  • ここでは、その図が示す関係の種類と、代表的な繋がりを整理する

Leemis & McQuestonの分布関係図

  • 出典: Lawrence M. Leemis and Jacquelyn T. McQueston, “Univariate Distribution Relationships,” The American Statistician, Vol. 62, No. 1, pp. 45-53, February 2008
  • 76の単変量確率分布を、10×8のマトリクス状に配置し、それらを結ぶ矢印で関係を示した図
  • インタラクティブ版が公開されており、各分布のPDF・CDF・モーメントの情報や、矢印をクリックすると関係の証明を確認できる

分布関係図

分布同士の関係の種類

図で示される矢印は、大きく4種類に分類される。

特殊ケース(Special Case)

パラメータを特定の値に固定すると、別の(より単純な)分布に一致する関係。

  • ガンマ分布の形状パラメータを1にすると指数分布になる
  • t分布の自由度を1にするとコーシー分布になる
  • ベータ分布のパラメータを両方1にすると一様分布$U(0,1)$になる

変換(Transformation)

ある分布に従う確率変数を変換すると、別の分布に従うようになる関係。

  • $Z \sim N(0,1)$のとき、$Z^2 \sim \chi^2(1)$
  • $X$が指数分布に従うとき、$X^{1/k}$はワイブル分布に従う

極限分布(Limiting Distribution)

パラメータを極限に飛ばすと、別の分布に近づいていく関係。

  • 二項分布$\mathrm{Binomial}(n,p)$で、$n \to \infty$かつ$np=\lambda$を一定に保つと、ポアソン分布$\mathrm{Poisson}(\lambda)$に近づく(ポアソンの少数の法則)
  • 中心極限定理により、二項分布・ポアソン分布・ガンマ分布など、多くの分布はパラメータを大きくすると正規分布に近づく
  • t分布は、自由度を$\infty$に飛ばすと標準正規分布に近づく

ベイズ関係(Bayesian Relationship)

ある尤度に対して、特定の分布を事前分布に選ぶと、事後分布が事前分布と同じ分布族になるという関係(共役性)。

  • 二項分布の尤度に対して、ベータ分布は共役事前分布になる
  • ポアソン分布の尤度に対して、ガンマ分布は共役事前分布になる
  • 分散既知の正規分布の尤度に対して、正規分布は共役事前分布になる

正規分布からχ²・t・Fへ

検定でよく使われる3つの分布($\chi^2$分布・t分布・F分布)は、いずれも標準正規分布から具体的な変換で導出できる。この繋がりを順番に追ってみる。

まず、標準正規分布に従う独立な確率変数$Z_1, \ldots, Z_k$を用意する。

$$ Z_i \sim N(0,1) \quad (i=1,\ldots,k) $$

これらの二乗和が、自由度$k$のカイ二乗分布に従う。

$$ \sum_{i=1}^{k} Z_i^2 \sim \chi^2(k) $$

標準正規分布に従う$Z$と、独立な$\chi^2(k)$を組み合わせると、自由度$k$のt分布が得られる。

$$ \frac{Z}{\sqrt{\chi^2(k)/k}} \sim t(k) $$

独立な2つのカイ二乗分布の比を取ると、F分布が得られる。

$$ \frac{\chi^2(d_1)/d_1}{\chi^2(d_2)/d_2} \sim F(d_1, d_2) $$

さらに、t分布とF分布の間にも直接の関係がある。

$$ t(k)^2 \sim F(1,k) $$

つまり、正規分布1つから出発して、二乗和・比という単純な演算を積み重ねるだけで、検定でよく使う分布が芋づる式に導出できる。

まとめ

  • 確率分布は、個別に暗記する対象というより、特殊ケース・変換・極限・ベイズ関係で相互に繋がったネットワークとして理解すると見通しが良い
  • 正規分布を起点に、二乗和・比といった具体的な演算を追うだけで、$\chi^2$・t・F分布が導出できる
  • Leemis & McQuestonの分布関係図は、こうした繋がりを俯瞰するための地図として、統計を学ぶ上でかなり有用

参考文献

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