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マクネマー検定でモデル比較の有意差を検定する

目次

背景

  • 分布外データの対処方法の結果の比較では、実験Aと実験Bの差が本物かどうかを疑うべき、という話をした
  • 実際にその差を統計的に検定する方法として、マクネマー検定(McNemar’s test)がある
  • 同じテストセットに対する2つのモデルの正解・不正解を比較するのに使う、ペア化されたデータ専用のカイ二乗検定

なぜ単純な精度の差では判断できないか

  • モデルAとモデルBの精度を、同じテストセットで比較したとする
  • 単純に「精度の差が何%あるか」だけを見てしまうと、その差が本物の性能差なのか、たまたまのブレなのかが区別できない
  • さらに、同じテストセットを使っている以上、サンプルごとの正解・不正解はAとBの間で相関する
  • そのため、AとBを独立な2群として扱う単純な比率差の検定(例えば2標本の$z$検定)を使うのは前提が間違っている
  • マクネマー検定は、この「同じサンプルに対するペアの結果である」という前提を正しく扱う

2×2分割表

同じテストセットに対するAとBの正解・不正解を、次のような分割表にまとめる。

-Bが正解Bが不正解
Aが正解$a$$b$
Aが不正解$c$$d$
  • $a$:AもBも正解したサンプル数
  • $d$:AもBも不正解だったサンプル数
  • $b$:Aは正解、Bは不正解だったサンプル数
  • $c$:Aは不正解、Bは正解だったサンプル数

$a$と$d$は一致するペア(concordant pairs)で、AとBのどちらが優れているかについては情報を持たない。実際に比較に使えるのは、$b$と$c$の不一致ペア(discordant pairs)だけ。

検定統計量

帰無仮説は「AとBの性能に差がない」で、これは分割表の上では「$b$と$c$が同じくらいの数である」という仮説に対応する。連続性補正を加えた検定統計量は次の通り。

$$ \chi^2 = \frac{(|b - c| - 1)^2}{b + c} $$
  • この統計量は、自由度1のカイ二乗分布に近似的に従う
  • $b + c$が小さい場合(目安として25未満)は、カイ二乗近似の精度が落ちるため、二項分布に基づく厳密検定(exact McNemar test)を使う方が安全

具体例

200件のテストセットに対して、モデルAとモデルBを評価したとする。

-Bが正解Bが不正解
Aが正解15020
Aが不正解1020
  • モデルAの精度:$\frac{150+20}{200} = 85\%$
  • モデルBの精度:$\frac{150+10}{200} = 80\%$
  • 見た目の精度差は5ポイントある

これをマクネマー検定にかけると、次のようになる。

$$ \chi^2 = \frac{(|20 - 10| - 1)^2}{20 + 10} = \frac{81}{30} \approx 2.7 $$

自由度1のカイ二乗分布で有意水準5%の臨界値は約3.84であるため、$\chi^2 \approx 2.7$はこれを下回る。つまり、見た目は5ポイントの精度差があっても、この不一致ペアの数(20件と10件)では、統計的に有意な差があるとは言えない。

使う上での注意点

  • 同じテストセットに対する、同じサンプルのペア予測であることが前提。テストセットが異なる2つの実験の比較には使えない
  • p値は「差がないという帰無仮説のもとで、観測された不一致ペアの偏りが起きる確率」を示すだけで、効果量(実際の差の大きさ)を示すものではない
  • サンプルサイズが小さいと、実際に意味のある差があっても検出力が不足し、有意差が出ないことがある
  • 逆に、テストセットが十分大きい場合は、実務上どうでもいいような小さな差でも統計的に有意になりうる
  • こうした限界があるため、p値だけでなく、分布外データの対処方法で触れたWinner’s Curseのような、実験比較全体に対する慎重さも合わせて必要になる

関連する検定

  • 5×2 cvペアードt検定(Dietterich, 1998):交差検証を使う場合に、複数の分割を組み合わせてより安定した検定を行う方法
  • ブートストラップ法・permutation test:分布の仮定を置かずに、リサンプリングによって差の有意性を評価するノンパラメトリックな方法
  • Cochranの Q検定:3つ以上の分類器を同時に比較する場合の、マクネマー検定の拡張

まとめ

  • マクネマー検定は、同じテストセットに対する2つのモデルの正解・不正解のペアから、その差が統計的に有意かを検定する手法
  • 一致するペア($a$、$d$)は情報を持たず、不一致のペア($b$、$c$)だけで検定する
  • 見た目の精度差があっても、不一致ペアの数が少なければ統計的に有意とは言えない場合がある
  • 検定はあくまで「差がないとは考えにくい」ことを示すだけで、効果量やその差の実務的な重要性は別に評価する必要がある

参考文献

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